浮ついた気持ちを落ち着けるために深く、深く深呼吸を一回。
冬の冷たい空気を肺いっぱいに溜め込んで、そして長く息をはく。
白い息は空へと溶けて―――
「………だめだ顔がにやける」
無骨な自分の手で口元を隠し、天を仰ぐ。
あと15分もすれば待ち合わせの時間。
久しぶりのデートにどきどきして、わくわくして、そして待ち遠しい。
「今日はどこへいこうか――」
京介からのデートのお誘いがあったのは大晦日。
滅多にないことだからこそ、嬉しさもひとしおとで。
冬休みの最終日、頑張って宿題を終わらせたかいがあったというもの。
こうして彼を待っている時間さえも愛しいくて恋焦がれる―――
さらさらと音もなく降り続く雪さえも気にならないほどに―――
「ぐえっ!」
「なに間抜け顔して空見てるんだよ…」
「京…マフラー掴むの止めてくれよ。息が止まったぞ…」
「はは。ぼーっとしてたからついな。悪ぃ悪ぃ」
あまり見ることのない京介の笑顔に言葉がつまる。
なんつーか…反則だ。
もう、どきどきがとまらない。
「鉄?」
「ん、あぁごめん。今日はどこに行く?」
「あー文具用品が見たい。ノート切れてるし」
「その後は適当に街中ぶらつく?」
「だな」
堂々と手を繋ぐことは出来ないけれど、それでもこうして一緒に居られることが幸せで。
ふとした瞬間に視線が重なるだけで鼓動が早くなる。
こんなにも京介のことが好きなんだ―――
そう思わずにはいられない。
日常のちょっとした一こまですら、幸せを感じられるほどに。
「おーい、鉄〜置いてくぞー!」
「っ! それは勘弁してくれよー」
灰色の雲の切れ目から天使のはしごが降りてきた―――