「誕生日、おめでとう」
ほうっ、と甘いため息とともに銀色に光る糸が樺地と跡部の間を繋いでいた。
ちょうど午前零時を迎えた瞬間、どちらからともなく二人は唇を重ねあわせ、抱き合っていたのだから。
時刻を知らせる音が余韻を残しながら消えてゆく。
「ここ、静かでいいな」
「ウス」
昨日、樺地の誕生日を迎えるために別荘ではなく離れのある旅館に泊まりに来ていた。
今まで別荘で二人の時間を過ごしていたのだが、強引にここに決めたのだ。
もっとも跡部は跡部でたまには樺地にもゆっくり休んで貰いたいという心遣いがあったのだけれど。
ちゃぷん。と水音と共に水面に波紋が広がった。
今、二人がいるのは離れの敷地内にある大きな露天風呂の中だった。
白く濁ったお湯から跡部の細くしなやかな腕が樺地の首筋にまわされた。
「景吾さん…」
年を重ねるごとに男らしさは増し、その落ち着いた雰囲気と物静かで穏やかな口調に、若くして持ちえてる貫禄に社内外を問わず女性達の視線が集まっていることを跡部は知っていた。
同時に彼の瞳に映りこむのは自分だけだということも知っていた。
だからこそ…跡部は焦る。
焦りすぎて空回りするくらいに、そしてそんな跡部を愛しいと思う樺地。
「んっ…ふぅっ………」
口付けをより深く、長く。
温泉に浸かっているせいでうっすらと桜色に染めあげられた肌を、樺地の大きな手がなぞり、ぴくりと体を揺らす跡部。
「そのまま力をぬいてて下さい…」
揺れる水面にあわせてぱしゃぱしゃと音が響いて―――