お気に入りの紅茶をいれてサンルームでのんびりとくつろぐ。
冬の寒さも終わりをつげ、外には満開の桜の木々が青い空に色味を加えている。
窓から入り込む春特有の甘みを帯びた花の香りがどこかくすぐったい。
「寒く、ないですか?」
「ばーか。気持ちいいんだからこのまま居ろよ」
「ウス」
頭上から話しかえれば少し困惑している樺地がそこにいた。
ソファに座ったまま、樺地に寄りかかるように持たれている俺を心配しているらしい。
いつもよりほんの少しだけ眉毛が下がっているのが見てとれた。
「――樺地」
「ウス」
白地に青い絵が描かれているマイセンのカップに手を伸ばす樺地。
見慣れたカップがやけに小さく見えるのは樺地の手がでかすぎるせいだろうが、
小鹿みたいに手が少し震えているのは可愛いかもしれない。
この前値段をうっかり言ったのがまずかったか?
まぁ、割れたとしても別のがあるから気にしなくてもいいんだが…。
こくり、と小さな音とカップをソーサに置いたときに発生した音。
そしてそっと俺の頬に添えられた太い男らしい指。
ソレを合図に俺は体の向きを変え、目を閉じる。
いつもならここで俺様から行動を起こしてやるところだが、たまにはいいだろう。
そんな俺の意図に気がついたのか、樺地の唇が俺の唇に触れ、液体が流れ込む。
琥珀色した甘くないはずの紅茶。
やけに甘く感じるのは樺地とキスをしているせい――
読んでいたテニス雑誌をその辺に投げ捨て太くがっしりとした樺地の首にしがみつく。
抱き寄せられた体から布越しに感じる体温。
飲み込まれた紅茶が無くなってからもなお深く、深く口付けを交わす。
一つになりたくて、より樺地を味わいたくて――
貪欲なまでに行為を続ける。
風の音も、木々の擦れる音も、鳥の鳴き声も、口付ける音すらも聞こえなくなる。
ただ、俺達の鼓動が重なり合った音だけが聞こえる。
どちらからともなく唇が離れる。
繋がっていた証の銀色の糸がプツン――と切れて少しだけ悲しくなった。
「跡部さん…」
俯いてしまった俺に手を添えて自らのほうへ顔を向かせる樺地。
俺を覗き込む黒目がちな目に射抜かれて、身動きが取れなくなる。
その小さな目に宿っているのは計り知れない熱量。
俺を思って―――の。
一見、穏やかで大人しく見える樺地。
その胸のうちはむしろマグマよりも熱いものが流れている。
気がついたのは付き合いだしてからだがな。
触れるだけの口付けが俺の唇におりてきた。
言葉では言い表せない、樺地のメッセージがソレには詰まっていて。
「樺地…」
名前を言うだけで体から余計な力が抜ける。
愛しい――と、思う気持ちで心が満たされてゆく。
「―――っ!」
俺の唇を節くれた樺地の親指が濡れた唇を拭うように触れた。
瞬間、声にならない音が口からもれ同時に顔が熱くなる。
―――恥ずかしい。
ただ、その思いに囚われただけなのに。
見上げれたさっきよりも柔らかに微笑む樺地の姿が。
「…責任とりやがれ」
「ウス――」
シャツの中にすりと入り込む手。
やけに熱くて、気持ちよくて。
そして体を重ね始めた。
誰も居ない昼下がりに―――